① フィリピンの東海上で発生した台風21号は、台湾方面に向かっていたところ16日突然北に方向を変え、17日には、大会会場のある九州西海岸に向け直進する状況であった。このままでは、大会の中止、または、延期を迫られざるを得ない状態の中で、審判団を中心とする深刻な協議が続いた。
② 予定されていた試し釣りは、磯釣り部門だけが午前6時の出船、五島列島の磯にて正午まで行う。船釣り部門は、高波の為見合わせる。
③ 午後二時からは、予定通り参加選手に対するオリエンテーションがもたれる。競技規定の確認、ならびに予選組の発表と対戦相手との顔合わせがなされる。
④ 午後五時からは、田平町の主催による前夜祭、引き続き開会式が行われる。天候不順に対する不安な思いを抱きながらも、会場は五大洋六大州から集った選手たちの期待と熱意であふれる。韓国の金大中大統領初め、日本の国会議員、さらには、世界の20カ国近い国々の現職大統領、首相等からの期待のメッセージが届く。40カ国を超える国々の選手達が参加を表明したが、大会1ヶ月前の米国9・11テロ事件の影響により、日本政府からビザの発給を受けられず、参加断念を余儀なくされた選手も少なくなかった。
⑤ 刻々と変化する天気図をにらみながら、深夜まで審判団による大会開催可否の協議が続けられる。夜半過ぎ、突然、台風の進路が北から東方に90度のターンをする。かつて1274年、当時の中国を支配していた元が、2万の軍勢で博多から上陸し日本軍を圧倒した後、夜船に戻ったところを博多湾を襲った台風で壊滅状態に陥ったのが10月20日であった。日本はそれを神風と呼んだ。今度はこの台風を、韓半島に張り出していた高気圧と偏西風が東に押しやった。役員も、選手達も不思議な感動に包まれた。 |